日本酒で欠かせない!日本酒で使う麹(こうじ)とその種類

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更新 2023/9/4

 

 

日本酒の裏ラベルによく書かれている「米、米こうじ」という文字。そもそも、なぜ米を麹(こうじ)にしなければならないのでしょう?

日本酒を造ることを仕込みと言いますが、お酒を造るときに、お米を蒸しただけではアルコールの生みの親である「酵母」が食べてくれません。

酵母の好物は甘いものです。

そのため、蒸米を甘いブドウ糖質に変える必要があります。

そこで、蒸米(炊きたてのご飯)を甘い糖分に変えるため、麹(こうじ)が登場します。

麹は米を酵母に食べてもらえるようにするためのスターター。このスターターを作らなければ酒は始まりません。

麹とは

日本酒の味を決める日本酒づくりの大切な工程を「一麹・二酛・三造り(いちこうじ・にもと・さんつくり)」といいますが、「麹」はその中でも一番大切な工程と言われています。日本酒の味の方向性を決める工程、と言っても過言ではありません。

麹とは、

麹とは食品を発酵させる際に有効な、コウジカビなどのカビを中心とした「微生物を繁殖させたもの」で、 コウジカビは増殖するために、デンプンやタンパク質などを分解する酵素を生産し、放出します。 これは、培地(ばいち:微生物や生物組織の培養において、培養対象に生育環境を提供するもの)となる蒸米などのデンプンやタンパク質を分解し生成される、グルコースやアミノ酸を栄養源としているためです。

専門的すぎてちょっとわかりづらいですね。もっと簡単に言うと、

麹とは「発酵食品に必要な微生物のかたまり」です。

この「微生物たち」が、酒造りにおける重要な役割を担っています。

小さな世界に、どんなロマンが詰まっているのか、少し興味が湧いてきました。

麹菌、種麹、もやし屋について

麹菌」とは麹をつくるときに使われる細菌のことを指します。麹菌の胞子のことを「種麹」と呼び、読んで字のごとく麹のタネの役割を果たします。種麹を蒸米に撒いて麹菌を繁殖させていきます。また、種麹のことを「もやし」といい、種麹を専門につくる会社まで存在します。業界では「もやし屋」と呼ばれています。

「もやし」の語源

「もやし」の由来は、諸説ありますが、麹菌の胞子が伸びていく様子を、草花が芽生える意味の「萌える」から

「もやす」

「もやし」

になったと言われています。

もやし屋の数

もやし屋は現在、全国で10社ほどしかなく、中でも醸造用の全種類の種菌をつくっているのはなんと3社のみ。このわずかな「もやし屋」が、私たちの愛するすべての日本酒の醸造用種菌(種麹)をつくっているとは、驚きですよね。

もやし屋は『もやしもん』という漫画(種麹屋の息子と菌の話)で一躍有名になりました。もやしもんでは麹や菌について詳しく描かれていますので、日本酒好きの方はぜひ読んでいただきたい漫画です♪

さて、この「麹」ですが、 一体どういった場面で日本酒造りに使用されているのでしょうか。

日本酒造りにおける麹の役割

日本酒を仕込むときに、酒米を蒸し、熱々の蒸米を冷やしてからタンクに入れてもろみにしますが、もちろんこれだけではアルコールは生まれません。

そこで登場するのが「麹」です。

麹の役割

日本酒に使われる米は、浸漬(しんせき)と言って、米に水を吸わせるため長時間水に浸けられます。そして、水分を多く含んだ米に蒸気を当てて一気に加熱します。これを「蒸きょう(じょうきょう)」といい、小籠包を蒸す時のイメージがまさに「蒸きょう」です。

この、蒸しあがった蒸米を水と麹でつくった水麹(みずこうじ)に加えることで、微生物たち(麹)が「蒸米(でんぷん)をブドウ糖」に変えます。これが日本酒における、麹の持つ役割です。

なぜ麹のつくる「ブドウ糖」が必要な理由

では、何のためにブドウ糖を生成させているのでしょうか。

ブドウ糖が生成されたら、次に登場するのが「酵母」です。 (酵母についてはまた別の記事で詳しくご紹介しますね♪)

酵母は「ブドウ糖を食べてアルコールを生成」します。

麹が分解したブドウ糖を酵母が食べ、ここでようやくアルコールが生まれるわけですが、酵母はアルコールを生成すると死滅してしまいます。

そのため、しっかりと酵母にブドウ糖分を食べさせ、じっくり発酵させるとアルコール度数はやや高くなり日本酒度も上がっていきます。

逆に、酵母の活動を途中で止めてあげることで、糖類が残ったアルコール度数の低い甘口のお酒を造ることができます。(甘口、辛口の味を決める要因は他にもいくつかあります。酵母の活動を止めるには温度をあげる「火入れ」か、アルコール度数が20度まであがると完全に死滅すると言われています)

ちなみに、麹がブドウ糖を生成することと、酵母がブドウ糖を食べアルコールを生成することが並行して同時に行われることを「並行複発酵」と呼びます。日本酒だけが並行複発酵と捉えられがちですが、「紹興酒・マッコリ・泡盛・焼酎」など他のアルコール類でも行われています。ちなみに、ビールやウィスキーの場合はブドウ糖化とアルコール発酵の両方が別々に行なわれるので、単行複発酵(たんこうふくはっこう)と呼ばれ、ワインのように初めから原料にブドウ糖分が含まれている場合は、ブドウ糖化を行う必要がないためアルコール発酵だけすればいいので、単発酵(たんはっこう) と呼ばれています。

少し脱線してしまいましたが、麹の働きかけがないと、酵母がブドウ糖を食べられずアルコールが生まれませんので、酒造りにとって麹がどれほど重要かお分かりいただけたかと思います。

もちろん、ただアルコールを生成するためだけでなく、味を決める上でも重要な役割を果たしています。それが種麹のそれぞれにある特徴の違いによるものです。

マメ知識:ご飯を噛み続けると甘くなる

子供の頃に、理科の授業で「ご飯を噛み続けると甘くなる」と教わったかと思いますが、 これと同様の現象を起こすことで麹を作ることができます。 こちらは、唾液に含まれるアミラーゼという酵素がご飯に含まれるデンプンをブドウブドウ糖や麦芽ブドウ糖に分解することで、甘みを感じるようになります。

麹を安定して作る技術の無かった時代は、巫女さんが米を噛み、唾液の成分でデンプンをブドウ糖化し、お酒を造る「口噛み酒」というものがありました。 この時代は麹ではなく唾液酵素が酒造りに使われていたんですね。

また、片栗粉(デンプン)でとろみを付けた中華料理などが、 食べてるうちにサラサラになってしまうのも、箸についた唾液酵素が原因なんですよ〜。 こちらは唾液酵素の働きが目で見えるので、「ご飯を噛み続けたら甘くなる」よりも感じやすいかもしれませんね!

麹の種類

麹には、種類があります。

例えば、「日本酒のときはコレ」「焼酎のときはコレ」「酸味を強調したいのでコレ」「土地柄、温度が高いのでコレ」という具合に用途や状況に応じて使い分けられています。

麹の色で分けられており、名前はとても覚えやすいです。

黒麹菌

黒麹菌は、琉球(現沖縄)から九州に伝わったといわれています。 雑菌の繁殖やもろみの腐敗を防ぐクエン酸を作り出す力がとても強いので、亜熱帯気候の沖縄では最適です。 一般に、黒麹を使ったお酒は、パンチのきいたインパクトのある骨太な味、コク、飲んだ後のキレの良さが際立っています。 焼酎に用いられることが多い黒麹ですが、心地よい酸が後を引く黒麹仕込みの日本酒も多く造られています。

白麹菌

白麹菌は、黒麹菌から突然変異で生まれた菌を培養したもので、 九州で主に使われています。 黒麹よりも酵素力に優れていることや、黒麹は胞子(黒い粉)が飛んで作業する人の衣服や蔵が汚れるといったデメリットがあったため、汚れる心配の少ない白麹が多く使われるようになっていきました。 白麹を使ったお酒は、黒麹よりも穏やかでマイルド、素材の味を感じられる味わいに仕上がります。

黄麹菌

黄麹菌は、クエン酸を含まず腐敗しやすいため、以前は酒造りには不向きとされていましたが、現在は醸造技術も進歩し、腐敗させることなくお酒を発酵させることが可能となりました。 通常は清酒、日本酒造りに用いられますが、最近では黄麹を使用した焼酎も登場してきています。 フルーティーな香りで芋焼酎の概念を打ち壊した、酉酒造の「富乃宝山」は黄麹菌による焼酎の代表銘柄です。

紅麹菌

紅麹菌は清酒や味噌に用いられ、紹興酒(しょうこうしゅ)の醸造などに使われています。中国では消化を助け、血行をよくする漢方薬として古典医学書にも記載されていますし、沖縄では病後の滋養食として王侯貴族に珍重された「豆腐よう」に使われています。

マメ知識:「米麹」「麦麹」「豆麹」とは?

日本酒造りに使われているのは「米麹」ですが他にも麹はたくさんあります。

例えば、「米麹」「麦麹」「豆麹」など。「米麹」は米を原料とし、日本酒、みりん、酢、味噌などの元となります。「麦麹」は、大麦などで作られた麹で、主に焼酎や麦味噌などの原料となります。「豆麹」は大豆を原料とし、八丁味噌や赤味噌と呼ばれる豆味噌に多く使用されています。

日本で生産されている味噌の8割は米麹を使っており、米味噌(または調合味噌)と呼ばれています。大豆を使ってるから味噌は全て豆味噌じゃないの?となりますが、麹の種類で分類しているので正確には米味噌、麦味噌、豆味噌に別れています。

また、少し前に流行した「塩麹」ですが、こちらは、米麹に塩と水を加えて発酵させたものです。塩麹に肉や魚などを漬け込むことで、麹が食品のタンパク質やデンプンをアミノ酸やブドウ糖へ分解することで旨みが増し、肉や魚が柔らかく仕上がります。

まとめ

麹について、いかがでしたでしょうか?

簡単にまとめてみると、

 ・一麹・二酛・三造りと言われるほど麹は日本酒造りの要となっており、味を決める上で重要な役割を果たしている
・米を蒸して置いておくだけではアルコールはつくれず、麹が蒸米をブドウ糖に分解する
・そのブドウ糖を酵母が食べてアルコールを生成する
・酒造りにおいて日本で使用されているのは主に「黒麹菌・白麹菌・黄麹菌」の3つがメイン
・種麹の種類で味わいが変わってくる
・黒麹は焼酎醸造に用いられることが多い。白麹も焼酎醸造メインだが、近年清酒醸造にも使われるようになった。黄麹は清酒醸造使われることが多い。

盛り沢山でしたね(汗

私たちの目に見えないところで、細菌たちが日々つくり上げている世界に、少しでも興味を持っていただければ幸いです。

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