2021年4月23日更新
一升瓶や4合瓶に加え、現在だとペットボトルに入れて販売されている日本酒もあります。
今回はそんな「日本酒の容器」に着目して、その遍歴を辿ってみたいと思います。
量り売りの江戸時代
まだお酒が量り売りされていた時代(江戸時代)、お酒は樽に入れられ原酒のまま酒屋に届けられ、 各々の酒屋が独自に加水したりブレンドして売っていました。当然店によって同じお酒でも味が違ってきますが、それが酒屋の『店の味』になっていたんですね。
さて、そのお酒は店の樽から陶器の徳利や瓢箪の容器、小さめの樽、升などに入れ量り売りされていました。 木の容器には防腐作用があるため多く利用されてきましたが、どうしても木の香りが移ってしまいます。 もちろんヒノキや杉などの独特の風味を楽しむこともできるのですが、お酒本来の味わいや香りが変わってしまうので人によっては好まれていませんでした。
ガラスの登場
このような悩みを解決したのがガラス瓶です。 ガラス瓶は壊れやすく少し重たいですが、値段も手頃で、長く使用しても容器に変化がなく、余分な成分が出ることもないので販売容器としてガラス瓶が瞬く間に普及していきました。
ガラス瓶が普及したことで、運搬が簡易化され地産地消が主であった「地酒」が、生産された町や村を離れ流通していくこととなりました。
ちょこっとポイント
- 江戸時代は酒屋が独自にお酒をブレンドし販売していた
- 木の容器は匂いが移るので次第にガラス容器が普及していった
- ガラス瓶の運搬簡易化によって地酒が他の地域に流通していった
紙パック、新容器の時代へ
その後、ガラス瓶から紙パック、新容器の開発が盛んに行われていきました。 これはガラス瓶の製造や回収、再利用等のコストがかかるため、安価で清潔な紙パックやペットボトルに変わっていったのです。
成形性のよい塩ビボトル製品がいろいろ出ましたが、塩ビモノマー溶出問題があったため、紙パック・BIB(バッグ・イン・ボックス→箱の中にお酒の入った厚手のビニール袋が入っているもの)・ペットボトルの3つが候補となりました。
ちなみに日本酒の一番最初の紙パックは180mlのテトラパックだと言われています。 現在のような紙パック(1.8リットル)の形態が普及したのは1977年頃からなので、紙パックの歴史はまだまだとても新しいものなのです。
しかし、紙パックは紙の匂いがついてしまう点や、衝撃に弱い点などが挙げられました。 現在焼酎甲類に多く見られるペットボトルは、瓶詰めラインを流用できるというメリットがあったので紙パックに形勢逆転を図りますが、 紙パックの原料をポリエチレン樹脂やペット、アルミを組み合わせた5層構造に変更し、弱点を解消することに成功しました。
こうした酒類容器の移り変わりは、飲む人の消費形態や食生活にも大きな影響を与えました。
樽から量り売りの時代は、年に数回だけ振る舞い酒を升の角に盛った塩を舐めながら飲み、飲んだからにはとことん泥酔するような様式から、酒屋から瓶やパックで買ってきた好みの銘柄を晩酌として食事や肴とともに楽しみ、そこそこに酔う(なま酔い)様式へと変わっていきました。
ちょこっとポイント
- ガラス瓶から紙パック、ペットボトル容器へ変化していった
- 容器の変化は形状だけでなく、飲む人の消費形態や食生活にも影響を与えた
色付きの一升瓶が出てきた理由
現在よく見られる一升瓶は、黒、茶、青、緑、透明など様々ですが、昔は元々透明が主流で、徐々に色付き瓶に変わっていきました。(青い瓶が流行っていたそうです) しかし、味や品質管理にこだわると、お酒が日光(紫外線)に弱く劣化を早めてしまうため、光を通しにくい茶色や黒の瓶が増えていきました。
※店内が暗い酒屋が多いのもこのためです!明るい酒屋さんもありますが、冷蔵庫に紫外線カットフィルムを貼ってある酒屋さんもあります。
生酒の保存については、他の記事でしっかり書いていますのでよろしければご覧ください!
容器の違いについていかがでしたでしょうか。 安酒の代名詞のようなポジションとなってしまった紙パックのお酒ですが、日本酒をたくさんの人に安価で安全に手軽に飲んで欲しいと広まっていったものでもあります。今後はどのような酒類容器に移り変わっていくのかも楽しみですね♪