「どぶろく・にごり酒」は何が違う?

f:id:smrki228:20200903043511j:plain

2021/8/6更新

 

今回は「どぶろくとは?」「にごり酒とどう違うの?」というご質問をいただきましたので、それぞれ細かく見ていきます。

「どぶろく」と「にごり酒」の違い

どちらも白く濁ったお酒で、パッと見おなじに見えるし、なんとなく「どっちも同じなのでは?」というイメージを持たれている両者。

みなさんはこの違いをご存知でしょうか。

まず、お酒が白く濁っている状態についてご説明させていただきます。

通常アルコール発酵によってできた醪(もろみ)を酒袋などに入れ圧力をかけて搾っていくのですが、ここで目の粗い酒袋を使うことで醪の中で溶けてはいるけど溶けきれていない成分が原酒の中に残ります。これが白濁のもとになります。

具体的には、米のデンプン成分や酵母などが白濁中に含まれています。

そもそも、酒税法で定義されている「日本酒」は次の要件を満たしたもののことで、アルコール分が22度未満のものをいいます。

  • 米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの
  • 米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品[3][4]を原料として発酵させて、こしたもの
  • 清酒に清酒かすを加えて、こしたもの

あれ、こしてないと日本酒と呼べないの?と思いがちですが、
以下の内容が、酒税法に追記されています。(以下意訳)

香味、色や、その他の特徴が清酒に類似する混成酒である「合成清酒」や、「どぶろく」など一部の「その他の醸造酒」も日本酒に含まれる

ということで、「どぶろく」や「にごり酒」も日本酒と呼べるように酒税法では整備されています。(分類としては、清酒ではなく「その他の醸造酒」となります。)

「どぶろく」とは?

では、そもそもどぶろくとはなんなのでしょう?

どぶろくは原則的に、醪を「しぼったり濾したりしない」お酒のことを指します。

おおよそ醪そのものだとお考えください。

また、どぶろくは醪の状態そのままを製品化するため「もろみ酒」とも呼ばれています。

「にごり酒」とは?

では、「にごり酒」とは一体なんのことなのでしょう?

こちらは、醪を目の粗い布などで大まかに濾したものを指します。

「濾す」のイメージとして近いのは、ペーパードリップなどでコーヒーを淹れる作業です。

目の粗いフィルター(布など)を通して、おおまかに日本酒の醪が濾されます。

にごり酒と一口に言ってもにごりの強弱はさまざまで、たとえば細かい布で濾した場合でも淡く濁っていれば「うすにごり」や「かすみ酒」など、蔵ごとに呼ぶ名前が変わってきます。

また、にごり酒を加熱せずに、酵母が生きたたままの状態のお酒を「活性にごり・活性清酒」などと呼ぶ蔵もあります。

ちょこっとまとめ

  • どぶろくとにごり酒の違いは「濾すか濾さないか」の違い
  • 「どぶろく」は、醪を「しぼったり濾したりしない」お酒のことを指す
  • 「にごり酒」は、醪を目の粗い布などで大まかに濾したもの指す
  • にごりの強弱で呼び方が変わる(「うすにごり」「かすみ酒」など)

 

どぶろくとは

どぶろくの分類

酒税法では「清酒」は濾すことを求めていますが(酒税法第3条7項)、どぶろくは濾さないことを原則としていますので、酒税法ではどぶろくは清酒ではなく「その他の醸造酒」とされています。

どぶろくの歴史

どぶろくは「豊作を祈願するための神聖な酒」という意味もあります。

どぶろくの起源は稲作と同じぐらいであるといわれており、古くから収穫した米を神に捧げるときにどぶろくを供えて、来年の豊作を祈願した風習があり、現在でも各地の神社で行われています。

また、お酒が広く一般的に飲まれるようになると、自家用のお酒を造って飲む家庭が増え始めました。

このお酒も見た目の印象から「どぶろく」と呼ばれていました。

しかし、この自家醸造酒は明治32年(1899年)に国の政策によって完全に禁止されました。

現在、どぶろくの自家醸造が許可されているのは、

飛弾の白川八幡神社などを始めとしてどぶろくを用いた伝統的な神事を行ういくつかの神社に限られています。

どぶろく特区

地域産品として「特定の場所でのみの飲用」という条件付きでどぶろくを醸造している地域もあります。

山形県の飯豊町では、地区内の旅館でどぶろくの醸造・提供が行われている他、どぶろくを使ったお菓子の販売などを通して地域振興を推し進めているそうです。

これらの地域は「どぶろく特区」と呼ばれ、地域振興のひとつの手段として注目を集めつつあります。

 

どぶろく特区

地域産品として「特定の場所でのみの飲用」という条件付きでどぶろくを醸造している地域もあります。

 

近年のどぶろく事情

2021年から5年以内の間に「その他の醸造酒」免許を新規で取得して、どぶろくを始めとして幅広い酒質の日本酒を造る事業者が増えて来ました。なぜ「その他の醸造酒」に区分される免許が増えてきたのかと言うと、日本酒を造りたい事業者がいても日本酒と名乗れるだけの免許は既存の酒蔵の歴史を守るためにも新規で取得することができないからなんです。

日本酒はおよそ1,000年前から飲まれていると言われ、伝統産業です。さらに日本を代表するお酒「國酒」にもなっています。戦争中は米不足や空襲から余儀なく廃業される蔵が後を絶たず、現在は消費量の低下から年間に20蔵廃業しています。

決して良いとは言えない状況が故、国も既存の酒蔵を守ることを決断しているのです。

ただ、それだけでは日本酒を守り続ける取り組みはできないかもしれません。日本酒離れを防ぐためには「今までにない新しい味」が大切では無いでしょうか。そのために、少しでも工夫して日本酒の消費量を増やそうと取り組んでいる方々がいらっしゃいます!

そのような方が造る「その他の醸造酒」一度飲んでみて下さい。新しい息吹を感じることができるはずです。

 

まとめ

どぶろくとにごり酒について、詳しく見ていくと色々と面白い発見がありましたね。

日本では、アルコール度数20%以下の自家醸造酒は禁止されているので、現在家庭でのどぶろく醸造は法律違反となります。「どぶろく特区」ではまだ造っているところもあると聞きますが、どぶろく特区ではない方は真似しないでくださいね(笑)

/* custom-footer */