三重 英(はなぶさ)の味わいや香りを解説

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総評

無農薬米を使用したはなぶさシリーズ。できたばかりの29BYを一般の小売店さんよりも一足先に皆さんへお届けしました。若さが残るものの、寒くなってくる頃に積極的に飲みたいお酒。開栓後は冷蔵庫ではなくて暗所での保管による味わいの変化をはっきりと楽しめるお酒になっています。

味わい

口に含んだとき

含んだ瞬間に柔らかい甘味と滑らかさを充分に感じることが出来ます。その後のキレに向かうまでの体感速度が早く、滑らかさの収束も早い印象です。

余韻

苦味、渋味を程々の量で感じ、日本酒度の高さ、又はアミノ酸が低いために収れんや刺激が増す印象を感じます。ただ、無農薬山田を使用しているためアミノ酸度も低いためとても綺麗な余韻です。

温度帯

冷酒で呑むなら16度からの印象で、余韻の苦味や渋味を和らげるために温度を上げることでバランスは取れてくると思います。また、このお酒はワイングラス よりも口の厚い酒器(猪口や、場合によっては湯呑み)を用いて印象を和らげて呑むとそっと寄り添う優しさを見せ始めます。また、その優しさは抜栓ののち常温にて2、3日暗所にて保存することで違うお酒を飲んでいるかのように舌触りが滑らかになります。

ペアリング

アルコール度数は通常のお酒とあまり変わりませんが、日本酒度+7で甘味を感じづらい印象なので、味わいに旨味、塩味を中程度以上感じ、脂による余韻があるものが好相性です。夏の脂の乗った旬のアジなどは非常に綺麗にハマるでしょう。また、温めると渋味が穏やかになり旨味は増し、米や豆などの素朴な食事との相性も良くなっています。これは常温保存をしたはなぶさに顕著で、途端に丸みを帯び、甘味を感じるようになります。稲荷やおでんの厚揚げ、と言った素朴なおばんざいでゆるりと過ごしたいです。

特別コラム

きょうかい6号酵母。昭和5年に秋田県の新政酒造の新政の醪から分離され、昭和10年から現在まで日本醸造協会が頒布しています。今も頒布されている酵母の中では最も古い酵母です。酵母の歴史としては、きょうかい1号が1906年に頒布され始めましたが、1号から5号までは寒冷地に適していないとされ現在は頒布されていません。これまでの酵母は10度以下でうまく発酵が進まないことがあり苦戦していました。しかし6号酵母は低温下でもしっかり発酵してくれることを知った他の造り手が徐々に使い始め評価が高くなっていきます。戦時中も活躍していましたが、戦後にきょうかい7号が頒布されはじめたことでシェアは下がっていきました。現在はきょうかい19号まで頒布されています。そんな6号酵母の特徴は発酵力が強く香りは穏やかになりやすいことです。コハク酸が出やすいとされていて、熱燗にも向くような酒質であることが多くなっています。

 
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