日本酒の発酵経路を解説!デンプンから何が出来る??

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みなさんこんにちは。 saketaku公認鑑定士の志村啓です。 いよいよ始まりました、「楽しい日本酒のテイスティング講座」

以前は「楽しい日本酒講座」を皆さんにご覧頂いていました。

この講座は日本酒の楽しい知識講座というわけではなく、年間で900回は繰り返すテイスティングの際に、私たちが気をつけているポイントを基本から順番に掘り下げています。

つまり、「日本酒を飲むのが好き」という方には難しい内容になってしまうかもしれません。 「日本酒にもっと詳しくなりたい」という方には特に読んで頂きたい内容ですので引き続きご覧ください。

日本酒の味が分かるようになると、とっっても楽しくなりますよ!!

早速ですが、まずは一番基礎となる「どのように日本酒が出来上がっていくか」をおさらいしていきましょう。

日本酒が出来るまでに関与する物質

日本酒は酒類の中でも「醸造酒」に分類されています。
ワインは果実酒、焼酎は蒸留酒です。

それぞれの定義に関しては簡単に「日本酒や焼酎でよく聞く「蔵造酒・蒸留酒」の違いと、発酵方法について」でまとめていますのでご覧ください!

定義は酒税法も絡み複雑な話になりますので本題へ。

日本酒の原料は「米・米こうじ・水」ですよね。

実はこれだけでは日本酒が出来るというわけではなく、雑菌淘汰の目的で用いる醸造用乳酸や、ときには米を溶かすための酵素材も用いることで素晴らしい日本酒を醸造しています。

原料について気になる方は

「バイオテクノロジーの芸術、あまり語られることのない日本酒の原料について」

をご覧ください!
ラベルに表記されるものは限られているため、造り手が意図的に加えていることを皆さんはあまり知らないと思います。

直接蔵の方に聞かなければ分からない情報ですが、「日本酒は造り手の技術力が結集してできている」ということを感じて頂けたら嬉しいと思います。

話を戻すと・・・、
日本酒は蒸したお米を麹の力で分解し、分解したものを酵母が食べてアルコールや日本酒の味や香りを生成しているわけですね。

麹や酵母のお話が出てきました。

ある程度マニアックな内容にはなってしまいますが、

「今さら聞けない、酵母や麹の本当のはなし。」

で麹の役割や種類、作り方の手順をご紹介していますので見てみてください。

実際の酒蔵で使用している道具も写真で紹介していますよ!

米から分解されて何が出来るのか

日本酒は「酒」であるわけですから、極端な話「アルコール」が作れれば良いのです。

アルコールを作ることが最大の目的ですが、作るには意外に複雑な工程を経ています。 ここで発酵経路を紹介します。

 

大まかな発酵経路

デンプン

↓(麹の酵素がデンプンを分解)

オリゴ糖や砂糖

↓(ここでも麹が分解)

グルコース(ブドウ糖)

↓(酵母の出番!アルコール発酵)

ピルビン酸(酸味などを作る回路に移動していきます)

アセトアルデヒド(香りでとても大切な役割を果たします)

アルコール

 

アルコールが出来るまでの経路をご紹介しました。
しかし、米にはタンパク質も含まれています。
タンパク質が分解されてできたのがアミノ酸です。

有機酸やアミノ酸の話になると概要としてはマニアックになりますので、大枠となるデンプンとタンパク質について解説していきます。

デンプン

お米を蒸した状態のデンプンでは、すぐにアルコール発酵が開始されるわけではありません。

アルコールを作るためには、酵母はブドウ糖(グルコース)がエサとなります。

そこで登場するのが麹。

麹が長い鎖状につながっているデンプンを切り刻んでいきます。

切り刻み続けることで個体だった米が徐々に、液体になっていきます。(液化)

この状態を「米が溶ける」といいます。

酒蔵の方が「今年の米は溶けるね〜」などというやつです。

米が溶けるとグルコースなどの酵母の餌となる物質が多くなることで発酵が順調に進んでいきます。

この微妙な具合を調整していくのが造り手の役目というわけですね。

「米が溶ける・溶けない問題」についてはここでは割愛します。

タンパク質

タンパク質は玄米中に約8%含まれています。

米の中心部は炭水化物の割合が多くなっていますので、タンパク質は外側に多く存在しています。

タンパク質は麹によって各種アミノ酸に分解されています。

アミノ酸は約20種類ありますが、日本酒で大きく関与するのは4種類

・アスパラギン(酸味)
・グルタミン(酸味)
・アラニン(甘味)
・アルギニン(苦味)

アスパラギンやグルタミンは、米や水中のナトリウムと結合することでナトリウム化して以下の2種類として広く認識されています。

 

・アスパラギン酸ナトリウム(うま味)
・グルタミン酸ナトリウム(うま味)

 

上記でご紹介したのは「味」に関与するアミノ酸です。

それ以外にも香りも作り出します。アミノ酸を酵母が食べることで日本酒の奥深さを出しているのです。

普段は意識されにくい味わいですが、私は日本酒の味で大切なのは、「アミノ酸」だと思っています。

奥深さや余韻、柔らかさを作る要素でもあるからです。

別の記事でしっかりとご紹介していきましょう。

その他

上記では米に含まれる「デンプン」と「タンパク質」に関してご紹介しましたが、米には「脂質・ビタミン・ミネラル」も含まれています。

脂質は香りに影響を与えます。

タンパク質由来で作られる香りのひとつに重厚感を与える「イソアミルアルコール」などが挙げられ、「油性マジック」や「油脂」などの香りを与えます。

油性マジックよりも、さらに重厚感を与える香りを持たせるためには脂質が欠かせません。

精米歩合が高いほど、この傾向にあります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

日本酒の発酵経路からまとめていきました。

日本酒のテイスティングにおいて、最も大切なポイントになりますので、この講座を読み進めてくださるのであれば、「大まかな発酵経路」は丸暗記したほうが良いです!

再掲載しましょう。

 

大まかな発酵経路

デンプン

↓(麹の酵素がデンプンを分解)

オリゴ糖や砂糖

↓(ここでも麹が分解)

グルコース(ブドウ糖)

↓(酵母の出番!アルコール発酵)

ピルビン酸(酸味などを作る回路に移動していきます)

アセトアルデヒド(香りでとても大切な役割を果たします)

アルコール

 

次の講座は、 日本酒度 酸度 アミノ酸度 ・・・などの、日本酒を数値化できる指標について、基本的な意味とそれぞれの数値が表す役割をご紹介していきます。

日本酒度だけが甘味を示す指標でないことはご存知ですよね?

少しでも不安になった方は、ぜひ次の講座も読んでみてください。

それではまた次回お会いしましょう!

 

「楽しい日本酒のテイスティング講座」の目次

日本酒の発酵経路を解説!デンプンから何が出来る??

 

 

 

日本酒の分析値が果たす役割〜ラベルには書かれない「アミノ酸度」がとても大切〜

 

 

 

日本酒と色の関係〜焼き肉と原理は一緒〜

「透明の日本酒」〜蔵人の怒りから大発見が生まれた!?〜
「緑色の日本酒」〜フレッシュなお酒であるほどグリーンに〜
「黄色の日本酒」〜熟成の進行具合〜

 

 

日本酒と香りについて〜人は約400種類の香りを嗅ぎ分けられる!〜

「フルーティーな香りの日本酒」〜ベースはリンゴとバナナ。あとは何を足す?〜
「清涼感があってスッキリとする日本酒」〜ヨーグルトや青竹も爽やかな印象を与えます〜
「ずっしり落ち着いた日本酒」〜油性マジックや蜜蝋の香り?〜
「香ばしい熟成感のある日本酒」〜飴またはカラメル。ときどき紹興酒〜
お米から作っているんだから!「米の香りのする日本酒」
この香りがしたらアウト!「質が良いとは言いづらい日本酒」に共通する香りたち

 

 

日本酒の味わいについて〜人は7個の味しか感じられません〜

「日本酒と甘味」〜脳が自然と欲する味〜
「日本酒とうま味」〜うま味も酵母が作る。深みと重みを与える味〜 \
「日本酒と酸味」〜爽やかな酸とまろやかな酸〜
「日本酒と苦味」〜時には深み、時には刺激〜
「日本酒と渋味」〜ポリフェノールはほとんどありませんが、渋いです〜
「日本酒と刺激」〜アルコール?酸味?刺激を与える要素たち〜

 

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