日本酒と香りについて〜人は約400種類の香りを嗅ぎ分けられる!〜

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こんにちは! saketaku公認鑑定士の志村啓です。

前回までは日本酒と色というテーマで解説していきました。

透明・緑・黄色など、色によって味わいの傾向が全く異なることをお伝えしましたがいかがでしたでしょうか。

気になる方は再度見返してみてください。

日本酒と色の関係〜焼き肉と原理は一緒〜

さて、今回からは日本酒を分解するテーマ「色・香り・味わい」の中でも、「香り」に注目して解説していきます。

私たちが普段生活している中で感じられる香りは、細かい差など嗅ぎ分けられないほど感じています。

人は、約400種類の香りを嗅ぎ分けられるんです。

でも実際に私たちが嗅ぎ分けられるのはごく数種類。

例えば日本酒に存在する代表的な香りは約10種類しかありません。

反対に日本酒に存在してはいけないような香りも10種類ほど。

本項では、日本酒に存在する代表的な香りを一つずつ解説していきます!

香りを感じとる鼻の構造と感じ方の違い

人間が感じる香りには2種類あり、空気の流れによって分けられています。

ひとつは「オルソネーザル」。いわゆる鼻から感じ取る香りです。

反対に、口から食べた食事が鼻腔の方へ抜けて感じる風味が「レトロネーザル」。「戻り香」や「含み香」と呼ばれたりもします。

オルソネーザルのように香りを感じれるのは、鼻の中に香りを感じ取れる細胞があるからですね。

香りを感じられる細胞のことを嗅細胞と言い、鼻腔の上部にあります。嗅細胞から嗅覚毛が出ていて、嗅毛をまとめる嗅珠が香りの信号を脳に送り込んでいるのです。

反対に、レトロネーザルは口から食べ物が入り、口の奥にある嗅細胞が同じように感じています。

日本酒の香りはいくつもの香りが重なり複合的に感じ取っている

日本酒だけに限った話でないですが、人間は単物質として約400種類の香りを感じ取ることができます。

しかし、日本酒中に存在する香りは単物質ではありません。

そのため純粋な物質を嗅いでみると、案外違和感を覚えることもあります。

それは普段から複合的な香りを感じ取っているからですね。

複数種類の香りを感じたときは、単物質からは感じ取れない「足し算」をした香りを感じるわけです。

こうなると、複合的に感じる香りの種類もすべて合わせると、数十万種類にはなるのではないでしょうか。

これらを判別する力を身に付けるとなると話が壮大になってきます。

今回の講座では簡単かつ複合的に感じる香りを取り上げ、単物質についてもご紹介していきたいと思います。

香りの凝縮感とニュアンスの違いはアルコール濃度によって変わる

単物質の紹介に入る前に、アルコールの高さによって香りの感じ方が変わることもお伝えしておきます。

アルコールが低いほど優しくて柑橘系に近い香り、高いほど凝縮感のある南国系の香りに変わっていきます。

アルコールが高いほど、香りが強くなるということを覚えておいてくださいね。

日本酒に感じやすい香りの物質と香り代表例

400種類ある香りの中でも、日本酒で感じやすい香りは限られます。
ここでは代表的な香りを簡単に紹介します。

カプロン酸エチル(リンゴ)
酢酸イソアミル(バナナ)
酢酸エチル(セメダイン)
イソアミルアルコール(油性マジック)
カプロン酸(樹脂)
ソトロン(アメ・カラメル)
エタノール(メンソール)
アセトアルデヒド(青竹)
乳酸(ヨーグルト)
2-アセチル-1-ピロリンヘキサナール(米)

日本酒に存在してはいけない香り物質と代表例

日本酒は繊細で技術を要するものなので、衛生管理や保管方法を間違えるだけで悪い香りを出すことがあります。

ここでも物質名と代表例を挙げます。

イソバレルアルデヒド(ムレ)
TCA(カビ)
ジアセチル(つわり香)
DMS(老香)
メルカプタン(玉ねぎ)
DMTS(たくあん)
4VG(燻製)

上記のような香りがあると、その日本酒が本質的に持っている香りを感じ取ることができなくなってしまうため、お酒の本性もわからなくなってしまいます。
これらの香りを感じられるということは、製造方法や衛生管理、貯蔵管理に何かしらの問題があると言って良いでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

香りがそもそも何種類あり、そのうちの何種類を人は感じれるのか。

複合的な香りが当たり前なので純粋な香りは感じづらいです。

ですがこれらの香りをまずは知ることで、香りを聞き分ける第一歩に繋がると思います。

次回以降でそれぞれの香りを詳細に解説していきます!

「楽しい日本酒のテイスティング講座」の目次

日本酒の発酵経路を解説!デンプンから何が出来る??

 

 

 

日本酒の分析値が果たす役割〜ラベルには書かれない「アミノ酸度」がとても大切〜

 

 

 

日本酒と色の関係〜焼き肉と原理は一緒〜

「透明の日本酒」〜蔵人の怒りから大発見が生まれた!?〜
「緑色の日本酒」〜フレッシュなお酒であるほどグリーンに〜
「黄色の日本酒」〜熟成の進行具合〜

 

 

日本酒と香りについて〜人は約400種類の香りを嗅ぎ分けられる!〜(←イマココ)

「フルーティーな香りの日本酒」〜ベースはリンゴとバナナ。あとは何を足す?〜
「清涼感があってスッキリとする日本酒」〜ヨーグルトや青竹も爽やかな印象を与えます〜
「ずっしり落ち着いた日本酒」〜油性マジックや蜜蝋の香り?〜
「香ばしい熟成感のある日本酒」〜飴またはカラメル。ときどき紹興酒〜
お米から作っているんだから!「米の香りのする日本酒」
この香りがしたらアウト!「質が良いとは言いづらい日本酒」に共通する香りたち

 

 

日本酒の味わいについて〜人は7個の味しか感じられません〜

「日本酒と甘味」〜脳が自然と欲する味〜
「日本酒とうま味」〜うま味も酵母が作る。深みと重みを与える味〜 \
「日本酒と酸味」〜爽やかな酸とまろやかな酸〜
「日本酒と苦味」〜時には深み、時には刺激〜
「日本酒と渋味」〜ポリフェノールはほとんどありませんが、渋いです〜
「日本酒と刺激」〜アルコール?酸味?刺激を与える要素たち〜
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