酒蔵取材〜京都・熊野酒造〜
桜の季節も終わり、半袖では少し肌寒さを感じるころ、京都の酒蔵さんに取材に行きました。
京都といえば言わずとしれた観光スポット。 風情ある町中に蔵を構えているかと思っていました。
ですが、京都駅から車で北上すること3時間。
京都は最北端の京丹後市に蔵を構え、「久美の浦」を醸す熊野酒造に到着。
蔵の向かいはこの景色。
お恥ずかしい話ですが、京都にもこんな場所があるものかとスタッフは終始驚愕でした!
ここは久美浜湾のなかでも最奥岸(京都駅に近い方)です。
久美浜町は山陰海岸随一の6km以上に続く白い砂浜があるそうです(行きたかった・・・)
釣りをしている方がいたり。
景色がとてもよくて。
クラゲ?がプカプカ浮いていました。
久美浜湾に別れを告げ、本題の熊野酒造さんへ。
今回取材に引き受けてくださったのは、専務・杜氏の柿本達郎さんです。
幼少期から蔵に遊びに行っても手伝うことはありませんでしたが、自分の家は酒蔵だと徐々に自覚を持っていったそうです。
ご両親も
「達郎が好きなことしたらええやん。この酒蔵を継ぐなら継ぐで自由だし、継がないなら継がないでそれも自由。継げとは言わん」
と言っていたので塾の教師として理科と数学を教えていたそうです。
就職して3年目、蔵では世代交代の話が持ちあがっていました。 杜氏さんが80歳を超え後継者が蔵にいないという状況になったのです。
柿本さんは帰省したときにお父さんである社長と話しました。
塾の仕事も魅力があって好きでした。でもこのまま向こう十数年塾で働いたとして、ふと帰省したとき廃虚になった蔵を見たら自分はどう思うのだろう。それを考えたら、やっぱり後悔するんじゃないかと思いました。私が生まれたのは酒蔵ですし、運命には従っておこうと。それで塾の仕事を辞めて帰ってきたんです。
現在は杜氏として酒造りの先導に立っている柿本さん。 前の杜氏さんから酒造りを踏襲していることもあり、「味を変えない」ということが職人としてのこだわりです。
そのための策として、仕込み水を「純水」にしてから仕込みを行います。
座右の銘は「学ぶの語源は真似るである。すなわち学ぶは真似るなり」
これまでの杜氏がやってきたことを原点にして、どういうふうに派生していくか。原点を守りながらお客さんの期待に応え、今のニーズに対応するためにどう展開していくか。それを考えながら酒造りをしていきたいです。
杜氏として酒造りを先導していく一方で、塾での経験もあって地域のボーイスカウトの指導者も行っています。 子どもたちのやりたいことを尊重して自発的な行動を心がけさせ、テスト直前になると勉強の指導も行っているのです。 テスト対策問題を作成すればドンピシャでその問題が出ます。
そのマルチな経験に、子どもたちからは「柿本隊長は何者なんだ!」と驚かれ、親御さんからも噂になっているそう。
そして徐々にボーイスカウトに入ってくれる子供たちも増えていきました。
教育のヒミツも伺うことができました!
1つの問題を解くにしても、90%くらいは私が答えているんだけど、残りの10%を子供が持っている知識を総動員させて答える習慣を作るのが大事ではないかと思っていました。そういう意味での教育にすごく魅力を感じています。「わからせるというより気づかせるというアプローチ」をすると子どもたちの勉強は楽しくなるんだなと実感しましたね。説明する能力はどの業界に行っても使えること。今もお酒の説明をするときのポイントとして重宝しています。
杜氏として、そして元教育者として。 これからも柿本さんは実家のお酒を主軸として、子どもたちと触れ合うことで家業と子どもたちを守り続けます。
気になる方は熊野酒造さんのホームページをごらんください。