三重 森喜酒造場 るみ子の酒 9号の味わいや香りを解説

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総評-寝ても覚めても純米酒

森喜さんの定番酒の1つ。全体的にクリアでシャープな味わいとなっています。苦味や渋味よりも酸味の印象が強く、味わいも優しいので杯数を重ねても重さを感じさせません。果実の香りも強すぎず、まさに「食中酒」と言えるでしょう。

香り

穏やかで落ち着いた原材料香を始めとして、酢酸イソアミルが存在しているためバナナの香りを感じ取れます。果実の香りを感じやすい9号酵母ではありますが、果実の香りはほどほどで精米歩合由来の米の香りや高級アルコールの香りとバランスを取っている印象です。

味わい

口にふくんだとき-甘味は穏やか酸味で爽快

柔らかい甘味と一瞬の滑らかさがあり、入り口は穏やかに始まります。ただ、早い段階から酸味を感じるため、徐々に滑らかさが薄まっていく印象です。

余韻-シャープにさっぱりとキレる

キレは残るものの酸味主体で苦味は大人しい印象です。アルコール度とアミノ酸度が低いため短めの余韻に感じます。甘味がさほど強くないためサッパリ感じやすいのではないでしょうか。

温度帯

お酒単体で考えるなら14〜18度あたりの冷蔵庫から出してほんの少し時間をおくと綺麗に感じるでしょう。あえてクーラーを効かせてお燗も楽しいと思います。45〜55度の比較的広い温度帯でバランスが取れますね。精米歩合60%ながら雑味の印象が少なく、味に一体感が生まれているお陰で飲用温度に幅を取れる印象です。

ペアリング

綺麗でスッと流麗に立つ印象のあるお酒なので、脂があまり強くなく旨味を感じる食材が良いでしょう。初鰹のような爽やかな香りと締まった身質との相性は素敵です。また、程々に青さを見せる野菜を天麩羅にしてさっぱりと食べた時の相性も楽しいと思います。具体的には、長ネギ、アスパラ、茄子などが相性です。

特別コラム-きょうかい9号酵母について

昭和28年ごろ、香露の醸造元である熊本県酒造研究所の保存酵母から分離されました。現在は日本醸造協会が頒布するきょうかい9号と、熊本県酒造研究所が頒布する熊本酵母に分かれています。本酵母は吟醸酒の発展に大きな役割を果たした酵母です。造り手の技術力の現状と動向を明らかにするために毎年開催されている「全国新酒鑑評会」の出品酒に9号が最も使われていました。精米歩合35%の山田錦を用い、熊本酵母で仕込めば全国新酒鑑評会で金賞を受賞できるという風潮があったほどです。そのスペックは「YK-35」と呼ばれました。味わいの特徴は、酸味が少なく吟醸香の中でもリンゴの香りに例えられるカプロン酸エチルを多く生産しやすいと言われています。一時代を築いた酵母は、造り手からも根強い人気を持つ酵母です。時代の流れと共に酵母の選択を変えることができるのは、杜氏をはじめとする技術者がいるからです。

 
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