宮城 中勇酒造 太白山にごりの味わいや香りを解説

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総評-しっかり甘いけど、飲み進めると酸味の立ち振る舞いに快哉を唱えたくなります

甘味とうま味を促進するような液体のとろみが、一瞬和菓子のようなはんなりと甘うまい印象を見せるものの、後半には酸味が顔を出し、うま味を伴った甘さと綺麗にバランスし始めます。それによって濁り酒としての完成度に拍車をかけることになっています。

香り

これだけしっかりとにごりを見せているだけあり、酒粕や原材料由来の米らしい香りを確認できます。この香りの奥には、酸度の高さが物語っているように、乳酸由来のヨーグルトのような香りも程よくとることができました。

味わい

口にふくんだとき-口の中に広がるしっかりとした甘味と滑らかさ

アタックに非常にしっかりとした甘味と、滑らかさを感じることができます。酒粕をミックスした状態のとろりとしたクリーミーなアタックが濃厚ながらシンプルな甘うま味を作っています。

余韻-杯を重ねたくなる酸味の仕掛け

中盤から見えてくる柔らかさのある酸味が前半の厚みを拭い去り、余韻の必要以上のべったり感を防いでくれています。依然としてうま味はあるものの、次の杯に手が伸びて行きます。

温度帯

しっかりとした甘味に支えるような酸味を持つお酒であることから、低めの温度で飲むことで香りに締まりを生み、味わいも甘味の要素が減じることで相対的に酸を感じられ軽さが出てきます。温度が上昇する前に細めの小さなグラスで飲むと良いでしょう。

ペアリング

酒粕や原材料のクリーミーさや、乳酸の印象を生かして、マスカルポーネやリコッタのようなナチュラルでフレッシュなチーズに、酸味を程よくもったジャム(オススメはブルーベリー)との相性が楽しいでしょう。また、酸味に甘味を合わせていく印象で、レモンケーキもより一層のクリーム感を楽しめます。また、塩味との相性ということで、酒粕を用いて仕込みをかけた塩辛も、普段とは違った側面を見せてくれそうです。

特別コラム-宮城酵母について

現在まで4種類ほどの酵母が分離されていますが、初代はきょうかい12号酵母として平成7年まで頒布されていました。近年は宮城吟醸酵母が使われるようになり吟醸香も出るようになったため、初代宮城酵母は頒布されなくなっています。そこで宮城県の純米酒造りに適した特性を持つ酵母の開発を進めました。名前を公募した結果「宮城マイ酵母」となったそうです。低温でも発酵し、長期モロミになっても良好な発酵を続け、柔らかい酸味かつ生成量も少なくなっています。 特徴を持った酵母を分離するのは大変で、数万株の中から厳しい条件をクリアした酵母だけが徐々に選別されます。宮城マイ酵母の場合は、アルコールが出ても発酵を続け、酸度が出ないものを選抜したそうです。ただし、造り手の多くが「ここ2年くらいで酸が出るようになった」という印象を持ち、改良を望んでいるようです。日本酒の核とも言える酵母の育成はとても大切なことですね。

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