「杜氏」とは?日本酒造りの最高製造責任者に迫る

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2021年3月26日更新

 

今回は杜氏と蔵人についてお話していきたいと思います。

 

杜氏とは

杜氏(とうじ、とじ)とは、日本酒の醸造工程を行う職人集団、蔵人の監督者であり、なおかつ酒蔵の最高製造責任者です。

 

 

杜氏の名前の由来は、一家の事を切り盛りする主婦のことを示した「刀自(とじ)」からきているという説が有力ですが、中国の酒の神を「杜康(とこう)」といい、良い酒を造ったことから「氏」を付けたという説もあります。このほかにも、「頭司」「陶師」「藤次」が杜氏の語源であるとの記述も存在しますが、その由来ははっきりしていません。

杜氏の役割

杜氏は造りの技術はもちろん、酒造りの複雑な工程を統率し、判断力や管理能力に秀でていて、様々な分野に精通していることが要求されます。

特に江戸時代以降、酒造りに必要とされる技術が高度化し、日本酒造りには繊細で複雑な工程と高度なテクニックが必要になりました。

近年技術の発達により精巧な管理が出来るようになったとはいえ、杜氏の長年のキャリアとそれに支えられた「勘」が酒の出来映えに今も大きな影響を与えています。

蔵人の仕事・役割

日本酒造りの現場における、蔵人それぞれの役職名と仕事内容をまとめました。

役職 仕事内容・役割
杜氏 蔵の管理、帳簿管理、もろみの仕込と管理、最高責任者
蔵内の次席として杜氏の補佐、指令伝達、蔵人の指揮、仕込み水汲み、もろみ仕込主任
麹師 麹造りの責任者、麹用蒸し米の取り込み、麹室仕事一切
相麹 麹師の助手
もと廻し 酒母(もと)製造の責任者、もと立ての仕事一切、もろみ仕込み
道具廻し 酒造用具の管理一般、道具洗浄、水の運搬、水洗い、蒸米取出し
釜屋 蒸米調整作業の責任者、甑(こしき)蒸し、釜焚きつけ、米洗い、米量り、仕込み水汲み
上人 桶洗い、水洗い、水汲み、道具準備
中人 水汲み、米洗い、蒸米運び、洗いもの
下人 洗いもの、米洗い、水汲み、泡番
飯炊 まま屋、食事一切、麹室手伝い、桶の見回り、掃除
追廻し 下人に属し、仕事に追廻されて忙しく立ち働く者という意です。多くは新入りの年少者で、蔵人はみな一度はこの階級を経験し、蔵の仕事を身につけ、上位に昇進していく仕組みになっています。相釜とも呼ばれます。

高年齢化が進み、杜氏の出身地から遠く離れた土地では造り酒屋が酒を造りたくても造る人がいないという深刻な事態が起きており、杜氏数も年々減少しています。

その背景には、杜氏を輩出してきた農業、漁業を中心とした社会において、近年は農業、漁業で自立出来るようになり、出稼ぎに行く必要がなくなったことにあります。

また、若者も安定した収入が得られる年間雇用を約束する企業に就職する就業形態がますます増えているとこがあげられます。

最近では若い杜氏や女性の杜氏も誕生してきており、ジェネラリストであり、エンジニアである若き杜氏を必要としています。

おまけ:現代における杜氏の姿

元来ほとんど多くの蔵では、蔵元と杜氏は独立した存在でした。 ※蔵元が、杜氏を冬に季節雇用として雇う。といった感じです。

近年では自社で杜氏を社員として雇用する社内杜氏が増えてきました。

時代背景もあるのですが、昔は腐造のリスクが現代よりも非常に高く、 腐造してしまった責任を、経営者が部下である蔵人に負わせられないという事があります。 現代では造りの技術向上だけでなく、科学の進歩の力もあり、 腐造のリスクは大幅に減りました。

杜氏集団から杜氏を雇う元々のスタイルと、 現代において毎年増えている社内杜氏のスタイル。

どちらも長所短所があるので、杜氏というところに視点をおいて、 好きなお酒の蔵がどちらのスタイルでお酒を醸しているか調べてみるのも良いかもしれませんね♪

杜氏集団

全国にはいくつかの杜氏集団があり、各地方による酒造りの様式はそれぞれ丹波流、但馬流、越後流、南部流、越前流等々と称し、各流派独自の技術を誇りにして日本酒の製造に当たっています。 しかし、現在では色々な事柄が科学的に解明され、以前ほど各流派の特徴は少なくなりつつあります。 以下は全国にある杜氏集団の流派です。

杜氏の流派

都道府県 杜氏名
青森 南部杜氏
岩手 津軽杜氏
秋田 山内杜氏(さんない)
福島 会津杜氏
新潟 越後杜氏
長野 小谷杜氏
長野 諏訪杜氏(すわ)
石川 能登杜氏
福井 大野杜氏
福井 越前糠杜氏(えちぜんぬか)
京都 丹後杜氏
兵庫 丹波杜氏
兵庫 但馬杜氏
兵庫 城崎杜氏
岡山 備中杜氏(びっちゅう)
広島 広島杜氏
高知 土佐杜氏
愛媛 越知杜氏(おち)
愛媛 伊方杜氏(いかた)
島根 出雲杜氏
山口 大津杜氏
福岡 柳川杜氏
福岡 久留米杜氏
長崎 肥前杜氏
長崎 生月杜氏(いきつき)
長崎 小値賀杜氏(おぢか)

多くの杜氏集団があることにびっくりされた方も多いのではないでしょうか?

明治時代には酒造技術が進んでおらず、全国的に酒を腐らせしまうことが多くありました。

そのため政府が酒造技術の向上を図ることを主な目的として、
杜氏組合の結成を推進してきたという歴史もあります。

杜氏個人の醸し方の微妙なニュアンスはありますが、
地域に伝わる独自の酒造りのノウハウが踏襲されており、酒造りの系統が守られています。

※蔵においては、契約している杜氏さんが不測の事態で蔵を離れても、
同じ流派の杜氏を招くことにより、少しでも酒造りの質を保つというメリットもあります。

日本の三大杜氏

上記のように多くの杜氏集団がありますが、 下記3集団が是非覚えておいて欲しい杜氏集団になります。

南部杜氏

岩手県石鳥谷町が発祥の地といわれています。浅井長政らにより「不来坊」の地に盛岡城が築城されて以来、南部地方の酒造りが発達しました。全国で活躍する南部杜氏は372人と全国最多を誇り酒造従事者を含めると1300名に及びます。石鳥谷町は県内でも優良な穀倉地帯としても名高い地域です。

越後杜氏

新潟県三島郡寺泊野積、三島郡越路町、小千谷市、中頸郡柿崎町、同郡吉川町が越後杜氏の出身地となっています。日本一の数を誇るだけあって、281名の杜氏がおり全国21都道府県で日本酒造りの技を伝え、銘酒を造り出しています。新潟だけでも100を越える蔵元があります。

丹波杜氏

兵庫県の中等部、丹波篠山(多紀郡篠山)出身者がそのほとんどを占めています。1755年、篠山曽我部の庄部右衛門が池田の大和屋本店の杜氏となったのが、丹波杜氏の起源とされています。現在杜氏数は55名で江戸時代から名高い灘五郷で灘の銘酒を支えています。

 

杜氏についていかがでしたでしょうか? 普段みなさんが飲んでいる日本酒はどこの杜氏さんによって醸されたもので、 どのような特徴があるかなど見てみるとより楽しく日本酒が飲めること間違いありません♪

また杜氏さんだけでなく酒蔵の人は怖いというイメージを持つ方もいるかもしれませんが、製造技術を丁寧に教えてくれる良い方が本当に多いです。

「なんか入りづらそうだから」とか「旅行の行程に組み込むのはちょっと...」という方も含め、足を運ぶのが億劫にならずに美味しい日本酒を気楽に飲みに行くことの一環として、酒蔵に皆さんが足を運んでくれる方がいることに期待しています!

まとめ

長くなりましたが、おさらいです。

  • 杜氏とは蔵人の総監督者であり、酒蔵の最高製造責任者
  • 杜氏は造り技術のみでなく、管理能力や判断力など様々な面で秀でていることが重要
  • 現在では、全体は杜氏数が減少しているが、若い杜氏が徐々に増え始めている

 

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