しぼりたてとは?
「しぼりたて」を考える前に。
「〇〇たて」というと皆さんは何をイメージしますか?
- しぼりたて生醤油
- 焼き立てパン
- できたてホヤホヤ
などありますよね。
これらには共通の意味があると思います。
それは「物体が完成したばかり」ということですね。
日本酒の「しぼりたて」も同じです。
低温でじっくりと時間をかけて発酵した日本酒を上槽(搾る)ことで清澄な液体となります。
しぼりについて紹介していきましょう。
お酒を搾る上槽とは
上槽(じょうそう、あげふね)と呼ばれています。
約30日かけて発酵が終了した醪を液体(清酒)と個体(酒粕)に分けること言います。
ここでようやく私たちが普段から飲む澄んだ液体となります。
次からは搾りについてもう少し詳しくご紹介していきましょう。
搾り方の違い
大まかに4種類あるのですが、少し複雑なので簡単に紹介します。
自動醪圧搾機
最も多くの蔵で使用されているのではないでしょうか。
横長のアコーディオンのような形で、長方形の板が100枚以上組み込まれています。
それぞれの板を囲っているのは化繊の布。
1枚1枚に醪を注入し、100枚以上連なるような形で一斉に圧力をかけていきます。
他の圧搾方法と比較して良い点は主に2点です。 - 短時間で大量のお酒を搾る事ができる - 酒粕を剥がす作業もそこまで重労働ではない
酒粕の形状は「板粕」と呼ばれるタイプが多いです。
槽搾り(ふねしぼり)
1枚当たり8Lほど入る酒袋(醪を入れる袋で、素材は綿や化繊で出来ている)の中に醪を入れて積み重ねて搾る方法。
長さと高さのある直方体の空間に酒袋を積み上げ、板を置いて圧をかけます。
更に上から機械でプレスしてお酒を搾っていきます。
酒袋は1回の搾りで200枚以上使用するため、毎度の掃除や手入れは時間がかかるのがデメリット。
圧力も自動圧搾機に比べると弱いものが多く、フレッシュ感よりも酒質がまろやかになるのが特徴。
酒粕の形状は「練り粕」と呼ばれることが多いです。
袋吊り
槽搾りと同様、酒袋に醪を入れた後、タンク上部に棒をかけて吊るします。
時間と手間がかかるため、高級商品として展開されることが多いですね。
味わいも上記の2つとは異なり質の高さを感じることができます。
年に一度のお酒のコンテスト「全国新酒鑑評会」もこの方法で取る蔵が殆どです!
遠心分離
近年登場してきた方法。
全国で導入している蔵の数も20程度と少ないです。
ドラム式/通常の洗濯機の脱水を行うような仕組みで、遠心力によって固形成分を沈殿させ、清酒と酒粕に分類されます。
お酒にストレスがかからないまま搾ることができるため、袋吊り同様非常に質の高い酒質となります。
ただし、遠心力がかかるので重い液体は外側に移動しているかもしれませんね。
しぼりたての特徴
一旦、しぼりたては出来上がったばかりの日本酒という定義にしておきましょう。
その場合、できたお酒にはどのような特徴があるのでしょうか?
色
日本酒が色づく要因の一つは「メラノイジン」です。
メラノイジンは熟成期間と共に徐々に増えていき、メラノイジンが増える前は「フラビン」という物質が酒の色に関与しています。
海が青いのは海の中の成分が光に反射しているからなのですが、新酒の場合も同じ原理です。
これによって緑色のトーンが強くなっています。
香り
色は緑のトーンが入っている。
香りも同じです。
新酒は火入れをしていないものが多いため、フレッシュさを感じる構成となっているものが多くなっています。
フレッシュさは、「青竹」「青畳」などのグリーンらしさを感じるものが多い印象です。
ただし、他の香りと混ざっているため、必ずしも上記の香りを取れるわけではありません。
味
色も香りも若々しさを感じたように、味でも感じることができます。
分子が落ち着いていないので刺々しく、荒々しく感じることが多いでしょう。
その荒々しさは「刺激」となって表れます。
少しピリピリとする味は新酒ならでは無いでしょうか。
「しぼりたて」と言えなくなるのはいつから?
「しぼりたて」という言葉を聞くのはいつが多いですか?
冬の季節が多いのでは無いでしょうか。
それは酒造りが始まるのが冬であることが多いからですよね。
しかし年中「しぼりたて」を提供している蔵も中にはあります。
それは蔵を冷蔵設備で囲い、夏でも高温による腐敗や雑菌汚染を受けることなく酒造りが出来るからですね。
年中酒を造れる蔵を「四季醸造」と呼びます。
一方、冬場に酒を造れない蔵は「寒造り」などと言うこともあります。
そのため、蔵によって酒を搾れる期間も異なることから「しぼりたて」は年中飲むことも出来るのです。
酒質から判断するのであれば、、
緑の色がなくなった酒
と表現するかもしれません。
色に着目して「しぼりたて」の日本酒かどうか判断していきましょう! (しっかり火入れすると、しぼりたてでも緑のトーンが見つからないこともあります)