- どんな日本酒にも感じる?清涼感の正体とは
- 清涼感を与える要素①アルコール
- 清涼感を与える要素②アセトアルデヒド
- 清涼感を与える要素③乳酸
- 複合香での香りの変化
- まとめ
- 「楽しい日本酒のテイスティング講座」の目次
- 日本酒の発酵経路を解説!デンプンから何が出来る??
- 日本酒の分析値が果たす役割〜ラベルには書かれない「アミノ酸度」がとても大切〜
- 日本酒と色の関係〜焼き肉と原理は一緒〜
- 日本酒と香りについて〜人は約400種類の香りを嗅ぎ分けられる!〜
- 日本酒の味わいについて〜人は7個の味しか感じられません〜
みなさんこんにちは。saketaku公認鑑定士の志村啓です。 香りの解説が第二回目を迎えました。
前回はフルーティーな香りの正体と複合的に感じるときの変化を紹介しました。
フルーティーは、吟醸と名がつかない限り感じづらい香りであったことは覚えていますか?
今回解説するのはほとんどの銘柄で感じとれる系統の香りです。
「スーッ」「ツン」とくるものなど、清涼感を与え、爽やかな印象をもたせます。
今回も清涼系に分類される物質をベースに解説をしていきます。
どんな日本酒にも感じる?清涼感の正体とは
これから話を前進させていくためにsaketakuが考える清涼感の定義を簡単に共有します。
清涼感=【爽やか/スッキリ/シャープ/軽やか】
などです。
言葉のままなのですが、いわゆる「辛口」のような意味を指します。
saketakuでは辛口という表現を用いないようにしているため、鑑定書などでは清涼感に属するような言葉を使用しているのです。
つまりは濃厚ということではなく、そのお酒が軽かったり、キレが強かったりするときに用いる表現が「清涼感」ということです。
今回のテーマである清涼感を感じる指標はどこが由来となっているのでしょうか。
清涼感を与える要素①アルコール
まず1つ目にご紹介しないといけないのは「アルコール」です。
本題に入る前に、日本酒を%表示してみます。
約80%が水、約15%がアルコール、その他が残りです。
15%は通常の日本酒ですが、もちろん20%など高い度数の日本酒も存在します。
アルコール度数が異なると、香りにも味わいにも影響が出ます。
香りには凝縮感が生まれ、鼻の奥でツーンという香りを取ることができ、
味は甘味・苦味・刺激の量がアルコール度数が高くなるにつれ増していきます。
香りにも味にも凝縮感が生まれ、「濃い」日本酒として認識しやすくなっていきますよ。
また、ラベル表記をみて清涼感の強いお酒かもしれないと予想していくのも楽しいです。
わかりやすい例を紹介するならば、「醸造アルコール」を添加しているかどうか。
つまりは純米酒であるかどうかということです。
アルコール添加をするときは、100%という高純度のアルコールを購入します。
その後、消防法の規定上、100%のまま保管しておくことができないので30%程度まで水を加えて下げています。
つまりアルコール添加を行う際は30%のアルコール水を加えていることになります。
そのため、アル添酒は「主張が強すぎずキレイ」になる傾向があるのです。
二日酔いするかしないかという問題に関しては、アル添酒だからといって残りやすいとは思いません。
むしろアル添の酒のほうが、体にとっての不純物が少なくなると思っています。
純粋な水を追加することで不純物の割合が微量とは言えど少なくなり、必然的に純粋なアルコールの割合と水が増えます。
少し話がそれてしまいました。。
アルコールは日本酒の根幹となる物質です。
その割合が少しずつ異なることで、凝縮感が生まれるということを覚えておいてくださいね。
清涼感を与える要素②アセトアルデヒド
アセトアルデヒドに関しては、緑色の日本酒で簡単に解説しました!
ここではもう少し詳細に解説していきたいと思います。
グルコースからアルコールの発酵経路の途中に存在するアセトアルデヒド。
日本酒からアセトアルデヒドを取れる経路は、アルコール発酵の途中で残存してしまったものです。
グルコースに変換されても全ての物質がアルコールになるわけではありません。
発酵経路の中で残ってしまうのは、一定しょうがないことなのです。
しかし発酵経路の中で残ってはいけない物質もあります。
「ピルビン酸」です。ピルビン酸が残存している状態で搾ると、良くないことがあります。
1つ目は不用意なアセトアルデヒドを出してしまうこと。ピルビン酸が酵母中の酵素でアセトアルデヒドを生成してしまいます。
2つ目はジアセチルが出てしまうこと。これも日本酒中で存在してはいけない香りとされています。
もちろんアセトアルデヒドがたくさん残存している状態で搾ることも良くはありませんが、多少の濃度であれば目をつむるようです。
このアセトアルデヒドの特性をおさらいします。
沸点が20.2度。つまり火入れをすると揮発してしまうということです。
しかし市販酒には、一回火入れをしたものであってもグリーンのトーンの香りを取ることができるものもあります。
それは、火入れ技術が向上したことにより、短時間で熱し、短時間で冷ますことで残存しているのです。
ただし、一回でも火入れをすることでメイラード反応が少し進みます。
そのため一回火入れの日本酒にはアセトアルデヒドと、微量のソトロンが現れるため「アメやシロップ」のような香りをとることができるようになっています。
アセトアルデヒドが存在しているお酒には、グリーンのトーンを感じることができます。
saketakuでは、青竹という表現をよく用いることが多いです。
清涼感を与える要素③乳酸
乳酸の出方が酸度が高いほど感じやすいということは、前回のフルーティーな香りの解説でもお伝えしました。
乳酸は揮発性かつ、清酒中に含まれる量も多いので感じやすいということが特徴でしたね。
ただし、酸度が高いからといって乳酸の香りを感じやすいわけではありません。
アルコールの凝縮感や熟成由来の香りとの相関によって異なります。
香りで乳酸を強く感じることができた場合は、酒の個性として酸が強いという認識でも問題ありません。
複合香での香りの変化
前項で先出ししてしまった箇所もありますが、まとめの意味も含めて再度おさらいしていきます。
アルコール主体で考えたときの複合香
アルコール度が高くなると南国系、通常のアルコールだと柑橘系になりやすい。
鼻の奥にツンと来る香りがあるため、清涼感が強い印象を持つ可能性がある。
アセトアルデヒド主体で考えたときの複合香
アセトアルデヒドが入ると緑のイメージがずっと強くなる。
果実も重厚感系の香りがあろうとも、グリーンのトーン引きずられ、青リンゴや青竹などの香りが感じやすくなる
乳酸主体で考えたときの複合香
果実が加わっていると、柑橘系のイメージになる。
少し熟成かかってくるとスパイスらしさを感じる。
具体例も用いて解説してみました。
与える影響は、果実や熟成などのベースの香りに爽やかさを与えることでしょう。
まとめ
清涼感を与える香りは、アルコールから火入れの回数、酸度など様々でした。
どちらにしても、これらの香りが存在していると爽やかさを与えるということですね。
清涼感はどんな銘柄にも含まれていて量はモノによって異なります。
香りの多様性を大きく体現している香りの種類だと思います。
次は純米酒などで香りの下支えをしてくれている「重厚感」について。
重厚?
と疑問を感じる方もいるかもしれません。詳細に解説していきます!
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